糖尿病のインスリン治療とGLP-1受容体作動注射薬

インスリンとは

インスリンはすい臓のランゲルハンス島という組織にあるβ細胞から分泌されるホルモンで、血糖を下げる唯一のホルモンといってよいでしょう。血糖が上昇すると、β細胞から分泌され、エネルギーとして利用したり、肝臓や筋肉、脂肪組織などに血糖を蓄えたり、タンパク質の合成を促したりして、血糖を一定量に保ちます。

インスリン治療

食事・運動療法や内服薬で、血糖がコントロールできない場合、インスリン注射が導入されます。「インスリンを注射するようになったらおしまいだ」「そんなにひどい糖尿病なのか」と絶望的になる人がいますが、インスリンを早期から導入し、疲弊したすい臓を休ませることによって、また、すい臓が元気を取り戻し、インスリン注射を中止しても、良いコントロールになる場合もあります。大切なのは、合併症のない、快適な生活をすることです。打ちやすい容器、痛くない針、簡単な自己血糖採血により、誰でも簡単にできます。

インスリンの種類

インスリンが血糖値を上昇させるまでの時間によって、超速効型、速効型、中間型、持続型(持効型溶解)に分かれています。15分から3時間まで大きな差があるため、状態などに合わせて適切なものを選択します。

インスリン治療の種類

インスリン療法は主に、4つの方法が行われます。

BOT療法(Basal Support Oral Therapy)

内服薬はそのままで、持続型のインスリンを1日1回打つ方法です。1日1回で、いつ打ってもよく、ゆっくり効くインスリンですから、低血糖の副作用も少なく、初めての患者さんに用いられることが多いです。血糖値を均一に下げます。

混合型インスリン製剤による治療

超即効型あるいは即効型のインスリンと中間型のインスリンを混合した注射薬があり、その割合は25~50%程度で、その人に合わせた比率が選ばれます。1日1回か2回打ちます。注射する回数を減らせるメリットがあります。

追加インスリン療法(3回法)

毎食前に、超即効型あるいは即効型のインスリンを打ちます。本来、食事をすると、血糖が上がり、それに反応して、インスリンが分泌されるわけですから、生理的な打ち方です。食べる直前に打ちますが、打った後、用事が出来て、食事ができなかったり、遅れると、低血糖になる可能性があるので、注意が必要です。このような場合は、少しでも食事を口にするか、ブドウ糖の補給をしてください。

基礎-追加インスリン療法

1日1回の持続型インスリンを基礎分泌の代わりに、超即効型あるいは即効型インスリンを食事による追加分泌の代わり、1日1~3回追加インスリンを打つ方法です。

注意したいポイント

一番簡単な皮下注射です~筋肉への注射はダメ

インスリン

脂肪がある皮下組織に注射します。一番簡単にできる注射です。皮膚の下まで、数ミリ刺すだけです。34ゲージというとても細い針です。痛みはほんの少しです。お腹、腕、お尻、太ももなどが適しており、注射した後、その周辺の筋肉を動かすことで吸収が早まるとされています。

 

低血糖の対処法を身に付ける

  • インスリンが血糖値を下げると、低血糖の症状が現れる可能性があります。
    ・目の前が暗くなる。
    ・手足が震える。
  • ・冷や汗や生つばが出る。
  • 等の症状が出ます。
  • ひどくなると、意識を失うこともあります。
  • 血糖を速やかに上げることのできるブドウ糖を摂取しましょう。
  • 薬局で無料でもらえるブドウ糖の錠剤やスポーツドリンクを飲みましょう。
  • 周りの親しい人に、自分が糖尿病で、低血糖症状が起きろこと、どんな症状で、どのように対応するかを伝えておくと安心です。

こうした対処法を身に付け、いつも摂取できるよう準備しておきましょう。

1日1回投与の持続型インスリンは血糖の低下が緩やかなので、急激な低血糖は起きにくく安心して使えるインスリンです。

インスリン注射の実際

インスリンはペン型の容器に入っていて、注射の度に、ディスポの新しい針をつけて、お腹、太もも、お尻、肩などの皮下組織に打ちます。毎日、すこしずつ打つ場所を移動していき、組織の傷みを防ぎます。

※インスリンを打つ針は、1回の使用ごとのディスポです。薬局で、インスリンの処方をうけると、適切な本数を無料で受けとることができます。針はインスリン治療の保険診療に含まれているもので、余計にお金を取られるものではありません。もったいないから、何度でも使う、というような不衛生なことはしないでください。

ナノパス34というほとんど痛みを感じないくらいの世界最細の直径0.18mm(34G)の細い針で打ちます。

ナノパス34は、針の先端のカットを非対称にすることで、極細ながらも薬剤の注入しやすさと耐久性のある、穿刺時の痛みを軽減させる世界最細の直径0.18mm(34G)の針なのです。

自己血糖測定

インスリンを注射している患者さんの多くは、自分で血糖を測定しています。34ゲージの細い針で、指先などに小さな傷をつけて、ゴマ粒ほどの出血をさせ、小さな血糖測定器で測定します。痛みはほんの少しです。
血糖測定器類は通院している病院・クリニックから、貸与されます。2型糖尿病の患者さんでは、健康保険で1日2回の自己血糖測定が認められていて、インスリン注射の目安にします。

自己血糖測定のやり方

ペン型の穿刺針の先端を指先などの穿刺部位に押し当てて固定し、穿刺ボタンを押します。針はディスポでその都度交換します。
ゴマ粒ほどの血液が、出てきたら、センサーの先端をつけるだけで、5秒ほどで画面に血糖値が表示されます。

GPL-1受容体作動注射薬

小腸で分泌され、膵臓のβ細胞に作用してインスリンの分泌を促進し、α細胞に作用してグルカゴンの分泌を抑制するGLP-1というホルモンがあります。糖尿病は体内のインスリンが不足しておこる病気と言われていますが、インスリンが十分にあっても有効に働いていない場合もあります。グルカゴンは血糖の上昇を促すホルモンです。糖尿病の治療ではインスリンが有効に働くようにすること、グルカゴンの分泌を抑えることも大変に重要です。毎日注射するリラグルチド(ビクトーザ)・エキセナチド(バイエッタ)・リキシセナチド(リキスミア)、週1回注射のデュラグルチド(トルリシティ)・セマグルチド(オゼンピック)があります。インスリンと違うところは、血糖が上昇した時にインスリンを分泌させるため低血糖の副作用が少ないことです。

インスリンとGLP-1受容体作動注射薬の配合剤

持続型のインスリンで血糖値を全体的に下げ、食後高血糖をGLP-1受容体作動薬で下げます。ゾルトファイ配合注(持効型溶解インスリンアナログ「トレシーバ(インスリン デグルデク)」と、ヒトGLP-1アナログ「ビクトーザ(リラグルチド)」)、ソリクア配合注ソロスター(基礎インスリン製剤(持効型溶解インスリン)の「インスリン グラルギン(ランタス注)」とGLP-1受容体作動薬の「リキシセナチド(リキスミア皮下注)」)があります。

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