怖い糖尿病の合併症
糖尿病は血管が傷つく病気です。小さな血管の障害と大きな血管の障害に分けられます。
合併症を防ぐにはヘモグロビンA1cを7%以下にすることが大切です。糖尿病の程度や発症してからの期間だけではなく、早期から発症する人もいます。
小さな血管が傷むと
- 末梢神経障害によるしびれや痛み
- 糖尿病性網膜症
- 腎臓病
がおこります。
比較的大きな血管が傷つくと、
- 壊疽
- 脳梗塞
- 虚血性心疾患(心筋梗塞・狭心症)
がおこります。
小さな血管の障害によって起こる合併症はいくつもありますが、中でも生活の質や命にかかわる、発症しやすい合併症が3つあります。
- 糖尿病性網膜症
- 糖尿病性腎症
- 糖尿病性神経障害
この3つは、糖尿病の三大合併症と呼ばれています。
糖尿病の早期には自覚症状がほとんど現れません。そのため、定期検診を受けていない場合、こうした合併症の症状が起こってはじめて糖尿病であることがわかる場合もよくあります。糖尿病は早期に適切な治療を受けることがとても重要な病気です。合併症を防ぐためにも定期的に血液検査を含む健康診断を受けてください。
糖尿病の三大合併症とは
糖尿病性網膜症
とても細かい血管が縦横に走っている目は、高血糖の悪影響を受けやすい器官です。糖尿病性網膜症は失明にまで至る可能性のある合併症で、成人の失明原因として頻度がとても高くなっています。
血糖値が高い状態が続くと目にある細い血管が詰まったり、コブができ、やがてそれが破れて出血を起こします。出血が網膜にたまると見えにくくなったり、目の前に小さな虫などが飛んでいるように見える飛蚊症という症状が出てきます。
さらに、すみずみまで血液が送れないため、網膜に酸素や栄養分をなんとか送ろうと新生血管というとてももろい血管ができはじめます。とてももろい血管なので破れやすく、それを繰り返すうちに網膜が引っ張られてはがれる網膜剥離が起こりやすくなります。剥離が起こった部分の視野は欠けてしまいますので、範囲が広いひどい剥離になれば失明する可能性があります。単純糖尿病網膜症⇒増殖前網膜症⇒増殖網膜症と進行していきます。レーザー光凝固療法などで治療する必要があります。
糖尿病性腎症
血液をろ過して老廃物を排出させ、栄養分を再吸収する役割を持つ腎臓は、高血糖の影響を受けやすい臓器です。高血糖が続くとろ過を行う糸球体の機能が低下してしまうため、老廃物のろ過がうまくできなくなり、また体に残すべき栄養素まで排出してしまうようになり、やがて腎不全につながる可能性があります。そうなったら、透析を受け続けなければなりません。日本では腎不全の原因として糖尿病性腎症が最も多くなっています。
糖尿病性神経障害
三大合併症の中では、最も早く症状が現れはじめることが多い合併症です。血糖値が高い状態が続くと、血流が阻害されて末梢神経まで酸素や栄養素が届かなくなっていきます。糖尿病性神経障害は、それによって神経が障害を受けている状態です。
感覚神経、自律神経、運動神経など、障害が起こった神経により症状の現れ方は変わりますが、足先の末梢神経に障害が現れるケースが多いとされています。
代表的な症状では、足先のしびれや痛みがあります。糖尿病の三大合併症の中でも早期に現れやすい症状ですので、まとめて解説しています。
合併症を早く見つけるために、足の状態を確認しましょう
糖尿病の合併症は、足の異常として現れることがよくあります。潰瘍や壊疽などの日常的ではない病変もありますが、しびれやこむら返り、ピリピリした痛み、水虫(白癬菌症)、タコ、オレンジ色の斑点など、なにげないため見逃してしまいがちなものもあります。また、足の感覚が鈍くなり、知らないうちに怪我をしていたり、アザができていたりといったことも起こります。
とても小さく軽い怪我が原因になって壊死を招き、切断にまで至る可能性もあります。糖尿病になったら普段から足のケアに気を付けましょう。
糖尿病性神経障害
血流が悪化してすみずみまで酸素や栄養が届かなくなると、末梢神経は正常に働くことができなくなります。これによって、怪我に気付きにくくなるなど感覚が鈍くなったり、足先のピリピリした痛みやしびれなどが起こります。鎮痛薬などでコントロールしづらく、症状が持続します。
糖尿病足病変
血流不足で末梢神経が働かなくなって感覚が鈍くなり、怪我をしやすくなって細菌感染しやすくなります。感覚がにぶることによって、見た目にかなりひどくならないと自覚できず、ひどい潰瘍になってはじめてわかるケースもありますし、壊死してしまった場合には切断しなければならなくなります。
糖尿病は、感染に対する抵抗力も弱めますので、感染症にかかりやすい状態です。水虫などにもなりやすく、痛みを自覚できないためタコなどもできやすくなっています。足の状態を定期的にじっくり観察して、異常があったら必ず医師に相談してください。
糖尿病性リポイド類壊死症
類脂肪性仮性壊死症とも呼ばれており、リポイドは脂肪に似ている物質です。スネの部分に黄色やオレンジ色の斑点として現れますが、痛みなどの症状はありません。悪化すると腫瘍になる可能性があります。てかりのある斑点で、太ももや手、腕などにできることもあり、糖尿病発症前にできるケースもあります。
重症感染症
高血糖が続くと、感染を防ぐ働きを持つ白血球の機能が低下し、抵抗力が低下します。また、糖尿病による動脈硬化が進行すると、血行が悪くなり、組織に酸素や栄養を補給しにくくなり、組織が修復する力が低下します。末梢神経障害があると痛みなどの症状を感じにくくなり、重症になるまでわかりにくくなります。そのため、肺炎や足の感染などが重症化し、命にかかわるようになります。